診療内容
成人に対する心臓血管外科手術全般(心臓疾患、大動脈疾患、末梢血管疾患など)を施行しています。標準的な治療を安全、迅速、合理的をモットーに丁寧に行っています。
2022年9月から、医師の増員により開心術が再開となりました。循環器内科や麻酔科などの各診療科、看護師や臨床工学技士などの多職種とも密に連携を取りながら、可能な限り緊急症例に対しても迅速に対応していきます。
当科では、年齢だけを理由に手術をお断りすることはありません。併存疾患、日常活動度など様々な方向から術前状態を評価し、最適な治療を選択してまいります。
【診療対象となる主な疾患】
- 虚血性心疾患
- 心臓弁膜症(大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁閉鎖不全症など)
- 胸部、腹部大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離など)
- 下肢静脈瘤
- 末梢血管疾患(慢性腎臓病、末梢動脈疾患など)
主な手術について
虚血性心疾患
内胸動脈を用いた冠動脈バイパスを積極的に実施しています。状態に応じて体外循環を使い分け、確実に血行再建を行います。
心臓弁膜症(大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁閉鎖不全症など)
僧帽弁閉鎖不全症に対しては弁形成術を積極的に行っています。また、大動脈弁疾患に対しては弁置換術を施行しています。開心術が困難と判断された場合は経カテーテル治療が施行可能な施設へご紹介いたします。
胸部、腹部大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離など)
人工血管置換術、ステントグラフト内挿術を施行しています。全身状態、大動脈の解剖などを考慮して治療を選択します。
下肢静脈瘤:血管内治療
下肢静脈瘤とは、足にある静脈に血が溜まり血管がボコボコと膨らんだり、蜘蛛の巣状や網目状に浮き上がる病気です。良性の病気ですが自然に治ることはありません。浮き出た血管が目立ったり、足のだるさや痒み、むくみ、こむら返りなどの症状が出ます。重症になると、皮膚が黒ずみ潰瘍化する事もあります(右図)。
症状がある方、皮膚炎が認められる方は手術が必要です。無症状でも見た目が気になる方はご相談下さい。当院では再手術など特殊な場合を除いては、以下に紹介する2種類のカテーテル治療を行っています。局所麻酔のため手術後もすぐに歩けますし、傷もほとんど目立ちません。手術時間は30分から1時間程度で、日帰り治療も可能です。
①血管内塞栓術(グルー治療)
医療用接着剤(グルー)を使って血管内を塞ぐ治療法です。「グルー治療」とも呼ばれています。2019年12月に保険適用された比較的新しい治療法ですが、当院では2020年10月より県内で最も早く導入しております。
局所麻酔がカテーテルを入れる膝付近だけで済むため、痛みも少なく術後弾性ストッキングの着用も必要ありません。シャワーは手術当日、入浴も手術翌日から可能です。さらに手術直後の車の運転や夜勤も可能です。また麻酔の量が少ないため、左右両足の治療を一度に施行可能な事もメリットです。
ただし、瞬間接着剤(グルー)にアレルギーのある方やアレルギー体質の方などは、この治療が適さない場合もあります。
②高周波血管内焼灼術
高周波による熱で血管内を焼いて塞ぐ治療法です。太腿の付け根から膝までの広範囲に局所麻酔を行います。術後は弾性ストッキングを着用します。手術翌日はガーゼ交換のため、必ず診察が必要になります。
上記治療でも足のボコボコした血管が完全に消えないケースがあります。気になる方は後日外来診察にて血管を固める薬剤(硬化剤)を注射し、目立たなくさせることも可能です。
当科では、様々な治療法の中からご希望に沿った適切な治療を選択しています。
末梢血管疾患(慢性腎臓病、末梢動脈疾患など)
透析のためのシャント造設術、末梢動脈疾患に対する下肢動脈バイパス術などの手術を行っています。
透析用シャントは、左右の腕に何回も手術を受けられて、これ以上の造設困難と言われた方の手術も行っています。上腕尺側皮静脈や上腕静脈を表在化して上腕動脈と吻合する方法で造設しています(次図)。人工血管や長期留置カテーテルと異なり、感染に強いことが特徴です。
新規ペースメーカー手術も施行しています。認知症など入院困難な方には日帰り手術を行っています。独自の工夫で合併症を防いでおり、400例以上の手術で気胸、血胸、感染、リード脱落などはありません。